2016年2月23日火曜日

男性用「痴漢抑止バッジ」に思うこと

痴漢問題に本気で取り組む男性が出てきたこと、とても嬉しく思っています。
これまで、私が痴漢の問題について話すことができた相手は、女性の友人だけでした。
ネットでは多くの男性が「痴漢冤罪」についてばかり語っています。
まるで痴漢なんて現実にはほとんど存在しないか、たいしたことない問題だとでも思っているかのように。
痴漢被害に遭う人たちが、どんなに怖かったり、気持ち悪かったり、屈辱的だと感じているか。
たいしたことない問題だなんて、そんなこと決してないのに。

私が痴漢の被害に遭い始めたのは、電車通学をするようになった高校生の頃です。
頻繁にではありませんが、お尻に何かが触れてくることがありました。
肩からさげた教科書や辞書が詰まった分厚いバッグを後ろに回してガードしました。

大学生になっても、社会人になっても、痴漢被害はなくなりませんでした。
夜の電車で酔った男の人が隣に座り、太ももに手を置いてきたこともあります。
混雑した電車で、揺れに合わせて微妙にお尻に触れたり離れたりするものがあって、痴漢かどうか判断がつかないから体の向きを変えて避けることもよくありました。
これは意図的に触れているな、と感じて、意を決して振り向いて相手の顔を見ると、慌てて離れていく男の人もいました。

一度だけ、お尻に触れている手をつかんで「なにするんですか、やめてください!」と言ったこともあります。
私に手を掴まれた男の人は「ぶつかっただけだ」と言い訳しましたが、べたっとお尻に触っていたのですからそんなわけありません。痴漢かどうか判別しがたいものも含めて、何度も触れられる経験をしてきているのですから、間違えたりしません。
でも結局、その男の人を警察に突き出すことはせず、次の駅で降りて行くにまかせました。
声を上げるだけで、そのときの私には精一杯だったのです。

いちばん怖かったのは、電車ではなく、自転車に乗っているときにあった出来事です。
夜、川沿いの道を自転車で家に向かっていると、すぐ後ろに気配があって、振り向いたら自転車に乗った男の人が無言で私を捕まえようとするかのように手を伸ばしているのです。
捕まったらなにをされるかわからない。
ぞっとして、全力で自転車をこいで逃げました。
まっすぐ家には向かわず、何度か角を曲がって相手がついてきていないのを確認してから家に入りました。
たまたま家族が出かけていて誰もいない晩で、怖くて眠れず、朝まで電話で友達と話して明かしました。

中年になって太ったら被害がなくなるかと思ったら、そうでもありませんでした。
引っ越しを控えて徹夜で荷物の整理をして疲れ切った明け方、ぼんやりと自販機で飲み物を選んでいたら、「いいですか?」と割り込んで先に飲み物を買った男性が、いきなり私の胸をつかんだあと原付で走り去ったのです。
いくら人の少ない早朝とはいえ、駅前まですぐの場所で交番も近いのに、こんなことをする人がいるなんて。
このときも、ナンバープレートを確認することもできなかったので、警察には届けませんでした。

「日本は安全だ」「日本は性犯罪が少ない」ですって?
そんなことが言えるのは、自分より体も大きく、力も強い相手から被害を受ける心配をしなくてすむ人たちだけです。
私が何度も被害に遭いながら一度も痴漢を告発したことがないように、性犯罪の多くが統計に表れていないのです。

「痴漢抑止バッジ」や男性用「痴漢抑止バッジ」により、真剣にこの問題に対処したいと思っている人たちがいることがわかって、とても心強く思います。
バッジをする人がいることによって、痴漢を思いとどまる犯人が増えるのならそれはとても歓迎すべきことです。
でも、実際に痴漢行為が行われていたら、きちんと告発することもとても大事だと思います。
被害者は、泣き寝入りしない。周囲の人は、容疑者の逮捕に協力する。
本当に痴漢が行われたのかどうか、逮捕された人が犯人なのかどうかは、きちんと警察が調べるべきことであって、冤罪を恐れて告発しないままでは被害があったことすら記録に残りません。
痴漢が実際に数多く行われていることが広く認識され、「痴漢を許さない」ことが建前でなく社会の共通した意識となることを望んでいます。

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